トラック産業の将来を考える懇話会・近畿 第9回セミナー

6月18日(土)、「トラック産業の将来を考える懇話会・近畿」の第9回セミナーがリーガロイヤルNCBで開催されました。

3月11日、東京都千代田区にある国土交通省に懇話会の代表団10名が要請行動を行い、要請書の内容6項目に対して回答がありました。今回のセミナーは、その回答の報告から今後の課題方針をまとめ、企業、労働者から議論する場をもつために開催されました。

懇話会の代表は「国土交通省の要請に代表として参加しました。議員の支援体制もあり行政側は真摯に要請を受けとめたと思います。これからも行政交渉を通じてトラック産業を改革させ事業者の経営安定、労働者が安全で安定した生活ができるように努力したい。そのためにも活発な意見を発言してもらいこの業界を立て直すきっかけになればいいと思います」と挨拶されました。

討論会の冒頭、事務局次長から規制緩和以降のバス業界について「バスドライバーは、勤続年数が短くドライバー不足、また賃金は大幅に減少しています。しかし、トラック業界と違い規制緩和の見直しは進んでいます。これは、人命が奪われるという重大事故が続き社会問題になった経過があります。もし重大事故が起きてなければ、緩和の見直しは進んでいなかっただろうと思います。業界を変えるためには、そこで働く労働者にゆとりのある安心した生活を担保しなければ、高齢・未熟が蔓延りドライバー不足が解消せず産業の疲弊が蔓延し続けます。」と現状報告がありました。

トラック産業の将来を考える懇話会・近畿 第9回セミナー 続いて、トラック業界の企業側7社から意見と今後の課題の発言がありました。

■  この業界に参入した時にはすでに規制緩和され、運賃は認可運賃の半分くらいになっています。適正運賃の収受と言っても多様であり難しい問題です。荷主に対して、どういう形で交渉や要求をもっていくのか、先をみた交渉が不可欠です。

■  この先この業界はどうなるのだろうと不安でいっぱいです。少子高齢化、燃料高騰、ドライバー不足をどのように解消するのかが先決だと思います。福井県でも24時間スーパーやコンビニがあり24時間体制で荷物を運んでいるがドライバー不足で荷物が運べない時代も来ると懸念されます。モーダルシフトも視野に入れ物流を止めないような取り組みも必要だと思います。

■  荷主と事業者の立場は歴然とした差があり運送業界も限界があります。行政で適正な運賃を設定して頂くことで交渉もやりやすい。国土交通省が進める交渉能力と言っても立場の違いが判っておらず、中小企業はいつ、契約が切られるかわらかない状況で張り合って交渉して、仕事が無くなると企業として成り立たなくなります。

■  商品をこの値段で売るためにはコスト削減し、輸送しなければ顧客は逃げてしまいます。顧客も同じ商品なら、安いところから購入できる環境になっています。また、パレット作業や作業料を含めた運賃設定になっていません。別の運送業者に輸送してもらえるなら手を引くことも検討していますが、利益が上がらないうえ、付き合いもあるので簡単に手を引けないことに問題があります。そのためにはきちんと原価計算をして交渉していくことと、保有台数を20台に引き上げた場合はそれ以下の企業が受けている仕事をどうするのか課題もあると思います。すべてを受け入れる体力がある企業は少ないのではないでしょうか。

■  大手メーカーから数十年間仕事をもらい安定していましたが2~3年前から仕事の量が減少し、トラックだけでは苦しく倉庫業もするようになりました。物流の減少分を倉庫業で何とかまかなっていますが一般の事業者は中々難しいとは思います。そして今問題になっている『同一労働、同一賃金』パート、非正規、契約社員の手を借りながら企業がもち応えています。

■  アベノミクスは『一億総活躍プラン』というものを提唱しました。この中で、働き方改革の目玉が『同一労働、同一賃金』です。正規社員と非正規社員との賃金差を欧州諸国並みに縮めることを目指し、長時間労働の削減や保育所の整備を通じ、子育てと仕事の両立をしやすくするということですが、正規と非正規の賃金格差を縮めることによって生じる総人件費の膨張を企業が受け入れる仕組みなど、意欲的な目標をどう実現するかは見えません。成長産業に労働移動を促すような制度改革が盛り込まれていないと懸念しています。

トラック産業の将来を考える懇話会・近畿 第9回セミナー 労働組合からの発言として、副代表から「企業は国の規制の中で必死に経営していますが、それでは個々の事業者だけを改善させることになります。その場しのぎだけでは産業の改革や労働者の生活安定には程遠い。企業と労働者が共同で要求の実現と運輸業界を未来に繋げるため懇話会を立ち上げました。トラック業界は99%の物流を支えているのに、行政は動こうとせず、結果近年トラック産業はなにも発展していません。行政はどれだれの運賃があれば健全で安心した経営ができるか把握しておらず、うわべだけの行政を動かすためにも懇話会を拡大し、訴えて声をあげていくことが重要です。」と訴えました。

まとめとして事務局長は「トラックの政策を国や行政に任すだけでなく、実際に仕事に携わっている企業などが要望の声をあげていかないといけません。それは参加者全員が一致するところだと思います。煮詰まっていないのは、トラック事業者の各企業がバラバラで、それぞれの企業の事情を出しているだけでいいのかというところに問題があります。」
生コン産業の報告もありましたが、「最初は別々だった企業が値崩れにより生コン業界が成り立たない状態に陥りました。この状況を打破するために個別で対応するのでなく、共同組合に結集し互いに助け合い、メーカーやゼネコンに対して「これ以下の輸送運賃では運ばない」と断言した結果運賃の値戻しが進んでいます。トラック産業も協同組合化の可能性を視野に入れ、個社の限界をその枠組みの中で変革していくことが重要です。」
「運賃については、これ以下の運賃で受ければ罰則させるなど、対等な立場で運賃決定し収受させなければいけません。行政が机の上だけで行うことは空論で意味がありません。私たち中小企業が国内の物流を担っている自信をもち、業界の声を反映させない行政に立ち向かっていかなければ労使の安定した生活が守れません。懇話会の中で会員拡大を行うとともに、企業と労働者の安定のためトラック産業を変えて行きましょう。」と話しました。